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幸せな時間

 若き日から私は、コーヒーの匂いが大好きであった。喫茶店の前を歩いていると、足が止まってしまっていた。しかしなぜか、コーヒーの味には納得できなく飲めなかった。スウェーデンにいる友達が、「あんな泥水どこが美味しいのかね?」と言った言葉を、今も忘れることができない。

私は出産する前、本の原稿を書く時にはコカ・コーラとオロナミンCを飲んでいた。(なんて体に悪いものを飲んでいたのか)と反省しているが、元気のいい子供が産まれたので安心している。子供を産んでからは、コカ・コーラの匂いを嗅ぐと吐き気がした。オロナミンCも嫌いになった。

 (困ったな、原稿はもう書けないのかな)と思った。しかし紅茶を飲むと少し気分が良くなった。また、仲の良い友達がグランドホテルでご飯をごちそうしてくださった後、コーヒーが必ず出た。そのコーヒーを飲むと、完全に今までのイメージとは違う味がした。

 (こんなに美味しいものはない!)と思い、友達と別れてから、秘書ともう一杯コーヒーを飲みに行った。「このホテルのコーヒーは美味しいね!」と言うと、秘書は「そうね。小山内さんはこのコーヒーを飲むために働くのね」と言った言葉が忘れられない。

 最近は特に、コーヒーを飲まないと頭が回らない。コーヒー中毒になってしまった。500mlのボトル缶のコーヒーをストローで飲んでいる瞬間が、今の私が幸福を感じる時である。

 幸福を探すことはむずかしいことだが、小さな幸福をたくさん見つけていけば、幸福は毎日感じるものだと思う。コーヒーの力でこの原稿を書けた今日一日が、幸福である。

 幸福すぎて、髪のてっぺんが踊っている。