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札幌いちご会 事務局

言葉の力


<いちご通信221号(2024年6月号)より抜粋>


執筆者: 吉成健太朗 (よしなり けんたろう)

 


自分の思いを言葉にすることが難しい。 

子供のころは何も感じることもなく言いたいことを言いたいだけ

言葉に出していたように思います。

「あれがほしい」「どこに行きたい」きっといろんな人を困らせてきたことでしょう。

でも、そのおかげでいろいろな体験をしてきました。

色んなイベントに連れて行ってもらったり、

キャンプに行ったりとアクティブに過ごしていたと思います。

 

とはいえ、歳を重ねて親の離婚や病院への長期入院生活、

中学時代の不登校など経験していく中で、

いつしか自分の思いを言葉にする機会が減っていきました。

病院では集団生活を行わなくてはいけませんので、ルールがあるのは必然です。

時間で区切られている生活は何かを自分で選択する機会も減っていきます。

みんなもきっと何かを我慢しているだろうから

自分も我慢するべきだと考えるようになっていきました。

自分の思いを言葉にすることは難しいです。

それでも、何かを変えたいと思ったときに、

もっとも有効なのは言葉を使うことだというのも、

これまでの人生において学んできました。

 

私は病院に入院中もテレワークで仕事をしていました。

今となってはテレワークという言葉は浸透していますが、

私がテレワークに出会ったのは10年以上前のことです。

病院の職員に「テレワークって何?」と何度も聞かれたものです。

 

テレワークに出会ったのは高校3年生の頃。

在学中に進路の話をする機会は何度もあり、

当時の私はずっと「働きたい」と言っていました。

そのためにパソコンを使用してできることを増やそうとして、

webデザインなどの勉強に力を入れていました。

それでも、当時の病院にいた卒業生のほとんどの人は院内にある作業室に行っていました。働くという前例がほとんど存在していないことで、進路の話は夢物語のように現実味が無いものでした。

 

転機が訪れたのは、高校3年に入った頃です。

夢物語のような進路でも、当時の私はことあるごとに

「仕事をしたい」と言い続けていました。

それを覚えていてくれた当時の校長先生が教育委員会の場で

この事を発信してくれたのです。

 

そして、教育委員会でそのことを聞き、今の会社の代表が会いに来てくれたのです。

このことがなければテレワークで院内就労をすることは出来なかったと思います。

 

当時は周りの人の協力と自分の運が良かったと思っていました。

協力の力はとても大きくあります。

運が良かったことも全てを否定することはありませんが、

今考えると「働く」という言葉を言い続けていたことによって

引き寄せられたことだとも思うのです。

 

言葉の力は想像以上に強力で、声を出せば手を差し伸べてくれることがあるのです。

 

私は去年の10月から長期入院していた病院を出て、地域生活を行っています。

退院の準備も一筋縄ではいかないことも沢山ありましたが、

問題が浮き上がる度に声を上げると助けてくれる方が増えていきました。

そうして多くの人の手を借りて地域生活を送れるようになりました。

 

あなたは今どんな悩みがありますか?

 

きっと、私では想像もできないような大きな悩みや課題を抱えている人もいると思います。「大丈夫」「頑張れ」ということはあなたの抱えているものを知ることができていない状況では使うべきではありません。

 

私は思いを言葉にすることが今でもやっぱり得意ではありません。

それでも、何かを変えたいと強く思うのなら、言葉にしなくてはいけない。

 

ですので、私は「声に出して」とあなたに伝えたい。

 



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